鈴木教授らは、磁石である鉄のごく薄い層(厚みは原子2?4個分)を、金の層と、酸化マグネシウムなどの絶縁体ではさんで、薄い膜(厚さ約1000分の2ミリ)を作った。この膜に電圧をかけると、電圧の向きによって、鉄の磁極の向きが変わった。金の層の働きで鉄が電圧の影響を受けやすくなり、それぞれの鉄原子が持つ電子の軌道が変わったためとみられるという。

 今回の実験では、電圧を加えなくなると磁極の向きは元に戻った。しかし理論計算では、非常に急激に電圧をかければ、向きが変わった状態を保つことが可能との結果が出た。実際に保つことができれば、次世代の記録メモリーとして期待される固体磁気メモリー(MRAM)の性能向上などに応用できるという。