女は、理由もなく怒れるもの。たとえその怒りに最初は原因があったとしても、そしてその原因が除かれたとしても、女は、怒り続けることができる。身勝手とかいうのではない、女は、理屈で怒らないのだ。理屈ドリブンではなく、感情ドリブンなのだ(ソース俺)。過去の「出来事」が原因でこじれた感情は、出来事をどう正そうとも直らない。別の感情で上書きしてもらうしかない。このへんの機微が分からない男性が不用意に読むと、主人公が「信頼できない語り手」であることに気づかないままラストで同意してしまう。

 そういう危険を秘めた、サスペンスフルな一冊。