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天国のあなたへ 秋田県 柳原タケ
娘を背に日の丸の小旗を振ってあなたを見送ってからもう半世紀がすぎてしまいました。
たくましいあなたの腕に抱かれたのはほんのつかの間でした。
三十二歳で英霊となって天国に行ってしまったあなたは今どうしていますか。
私も宇宙船に乗ってあなたのおそばに行きたい。
あなたは三十二歳の青年、私は傘寿を迎えている年です。
おそばに行った時おまえはどこの人だなんて言わないでね。
よく来たと言ってあの頃のように寄り添って座らせてくださいね。
お逢いしたら娘夫婦のこと孫のことまたすぎし日のあれこれを話し思いきり甘えてみたい。
あなたは優しくそうかそうかとうなずきながら慰め、よくがんばったとほめてくださいね。
そしてそちらの「きみまち坂」につれていってもらいたい。
春のあでやかな桜花、
夏なまめかしい新緑、
秋ようえんなもみじ、
冬清らかな雪模様など、
四季のうつろいの中を二人手をつないで歩いてみたい。
私はお別れしてからずっとあなたを思いつづけ愛情を支えにして生きてまいりました。
もう一度あなたの腕に抱かれてねむりたいものです。
力いっぱい抱き締めて絶対はなさないで下さいね。
秋田県二ツ井町の「きみまち坂」の四季を織り込んだこの文は、だいぶ以前に読んだ記憶があったので調べてみました。
二ツ井町が主催した1995年2月14日バレンタインデー「第1回日本一心のこもった恋文」大賞に輝いた柳原タケさんがかいたものでした。柳原さんは当時80才(実は81才)で秋田市に住んでおられました。
この文は靖国神社の遊就館にも展示されており、「正論」編集長 大島信三氏のブログにもこの文と出合った時の感動が述べられています。大島信三氏のブログ(ブログの後半と最期の部分をご覧ください。)
また、佐藤緋呂子さんという日本画家のホームページに行き着きました。
佐藤さんは柳原タケさんのお嬢さんで、昭和12年秋田市生まれ、秋田北高校、秋田大学学芸学部の出身です。佐藤さんのサイト (受賞式の様子が載っています。ロングヘアーの黒いドレスの女性は佐藤さんのお嬢さんで花束を受け取っている人が柳原タケさんです。)
佐藤さんと柳原タケさんは二ツ井町からのご褒美としてアメリカ映画「マディソン郡の橋」で有名になったアイオワ州マディソン郡へ旅行しました。
佐藤さんは、飛行機のなかで、子供のころの父の思い出をつづっています。