FNNニュース: 山本美香さん死亡 同...

シリアの内戦状況を取材中に銃撃戦に巻き込まれて死亡したジャーナリスト・山本美香さん(45)。同僚の佐藤和孝さんが撮影した映像などから、山本さんが狙い撃ちをされた可能性がさらに高まっている。

山本美香さん「けがしちゃいました」
佐藤和孝さん「たいしたことないよ、そんなもんは」
山本美香さん「けっこう、今の危なかったね。本当に人に向けて撃ってる。まったく、もう、あの...、やみくもに撃ってる」

激しい内戦が続くシリアで、取材中に銃撃戦に巻き込まれて死亡したジャーナリスト・山本美香さん。
なぜ山本さんは、銃弾に倒れなければならなかったのか、その謎に迫る手がかりとなる映像が新たに公開された。
映像は、山本さんとともに取材をしていた、同僚の佐藤和孝さんが撮影していたもの。
山本さんの映像で、最初の銃声が聞こえる直前、現場に響いた叫び声。
これを佐藤さんが撮影した映像で見ると、画面の右端を歩く私服姿の男が叫んでいるように見える。
その内容は「ハイダ・ヤバーニ」。
「これは日本人だ」と訳すことができる。
この時、私服姿の男は後ろを振り返り、山本さんの方を指差すようなしぐさを見せた。
振り返ったその視線の先には、銃を携えた兵士の集団がいた。
私服姿の男が兵士たちに向かって、「日本人だ」と叫んだのだとすれば、その理由は何なのか。
また、銃撃が始まる直前、佐藤さんが撮影した映像には、同行取材をしていた反政府側の自由シリア軍の兵士が発したとみられる音声が収録されていた。
2回繰り返された「ルア・タウヒード」と聞き取れる言葉。
これは、「自分たちはタウヒード部隊だ」という意味であるため、自由シリア軍の兵士が叫んだと考えられる。
なぜ、銃撃の直前に部隊の名前を名乗ったのか。
この直前、佐藤さんのカメラの前には、右手に銃を持った自由シリア軍の兵士とみられる人物の姿があり、その後、銃に手をやったまま、道の反対側を歩いてきた兵士の集団の方に近寄っていった。
その距離は、およそ15メートル。
敵か味方か、その身元を探っているかのようにもみえる。
そして、部隊名を名乗る声の直後に、私服姿の男が「日本人だ」と叫び、間髪を入れず銃撃された。
この間、わずか2秒半。まさに一瞬の出来事だった。
中東の衛星テレビ局「アルジャジーラ」によると、シリア政府は、外国のジャーナリストを銃撃のターゲットとするよう指示していたと伝えていて、山本さんは、日本人ジャーナリストであるとわかったうえで狙い撃ちされた可能性もある。
山本さんのカメラには、少年が「この女性は日本人? かわいそうに、手が...」と話し、兵士が「見た見た」と話す音声が記録されていた。
銃撃後、山本さんが持っていたカメラは、自由シリア軍の兵士と思われる男が回収。
そこには、現場近くにいた少年との会話が収録されていた。
その中には、気になるやり取りがあった。

少年「どうしたの?」
兵士「あいつらは私服の姿で、わたしたちの仲間のふりをしていた。それで山本さんは撃たれてしまった」
少年「きのうも思ったんだけど、グループの真ん中に1人、怪しい人がいた。気づかなかったと思う」
兵士「怪しいやつはいなかった」

「グループに怪しい人物がいた」というのは、山本さんらが行動をともにしていた自由シリア軍の兵士の中にスパイがいたということなのか、謎は深まるばかりとなっている。
山本さんの遺体は、トルコのイスタンブールに運ばれ、現地時間23日夜、家族と無言の再会を果たした。
対面に同席した佐藤和孝さんは「(家族は)『あー、いつものきれいな美香姉ちゃんだ』、『美香だ』というふうに言っていたのが、非常に印象的でしたし、『この顔だったらば、苦しまなくて逝ったのかな』というふうに、少しほっとしたというか、そんな印象を受けました」と語った。
山本さんの遺体は、日本時間25日に成田空港に到着する見通しで、それを受け、警視庁は刑法の国外犯規定を適用して捜査本部を設置。
遺族の意向をふまえたうえで司法解剖を行い、死因の特定など調べる方針。