なお武田氏の著書には《北極の氷が溶けても海水面は絶対に上がらない》というフレーズが何度も登場する。確かに、北極の海にぷかぷか浮かんでいる氷(厚さは3m程度)が溶けても海水面は上がらない。氷は水より軽く(比重が小さく)、その軽い分が水面に顔を出しているだけ(まさに氷山の一角)なので、溶けて水に戻っても水面は上昇しない(=アルキメデスの原理)。

 これは、武田氏が「浮かんでいる氷」しか見ていないからそういう結論になるのだ。IPCC報告のように、極地(北極圏)にある世界最大の島、グリーンランドの氷床(広い土地を覆う厚い氷)に目を向けると、一転して上記のような予測となり、水位は7mも上昇する。なおグリーンランドの急激な氷の消失については、アル・ゴア著『不都合な真実』(ランダムハウス講談社刊)P190?P209に、ショッキングな図版とともに詳しく紹介されている。