その結果、三つのコップのうち二つに食べ物を入れてコップを選ばせるなどして調べた空間記憶や、数量や因果関係に関する認知能力では、幼児とチンパンジーの成績はほぼ同じだった。オランウータンも空間記憶と因果関係の認知能力では劣ったが、数量に関する認知能力では幼児と差がなかった。

 ところが、プラスチックチューブの中身を出すところを見せると、幼児は上手にまねするが、類人猿はチューブをかんで壊そうとした。問題解決法のまね、他者の意図の理解など、社会的な学習能力は幼児の方が圧倒的に高かった。

 少数を比べて「チンパンジーは幼児並みの知能」などとする研究はこれまでもあったが、これだけ大規模な比較は初めて。人の脳は能力全般が高くなったのではなく、社会的な学習能力が突出して進化し、文化的適応が可能になったとする説を支持する結果だ。