そのリーダーぶりがにじみ出ているのが、第三章。すばるの建設記録であるのと同時に、それに携わった人々への讃える章でもある。これがもう、この人に声をかけられたらそれだけで士気が120%になるのではないかという、実にすばらしい褒め具合。ただ謝辞を述べているというのではなく、きちんと各自が何をやりとげたかを自分の目で確認した上で、一人一人をねぎらっている。この方は、人に報いるという行為を体で実践できるのである。

賛辞だけではなく、惨事も包み隠さず書いているのも素晴らしい。実はすばるは建設途中に一度火事にあっており、その際に三名の作業員が、そして別の事故で一名の作業員がそれぞれ亡くなっている。これらの犠牲者に対しても、「作業員四名」ではなく一人一人の名前をきちんと上げて哀悼している。本書が 200ページ弱の新書、それも「すばるの建設」だけではなく「すばるの功績」まで網羅していることが信じられない。