よそから幼虫をこそっと持ってきて、なんとか見劣りがしないようごまかしたりしていましたが、体裁を保つことの、なんと大変だったことか、なぜ、ホタルが野生として根づかないか、理解できなかった。水道水で幼虫を死なせたこともあった。全国どこでも、私と同じジレンマに悩んでいるはずです、それが、板橋の阿部さんのもとをたずねて、ようやく解決した」

 阿部さんのホタル研究の取り組みの中で、もっとも注目されるひとつに、「生態槽」がある。おおきなガラス容器に、ホタルを中心に据えた生態系が作られている。槽内は、ホタル、水、土、植物が調和し、食物連鎖が成立する空間だ。

 土にはミミズやダンゴムシが暮らし、微生物による分解活動が盛んなため、水は常に浄化されている。