ホルマリンは、殺菌力を持つホルムアルデヒドの水溶液である。ホルマリンを用いた死体の防腐処理は、いまでこそ広く行われているが、それを初めて行った人物の1人がサラフィア氏である。アルコールは、湿度が極端に低い地下墓地内で、ロザリアの遺体を乾燥させミイラ化する役割を果たしたとみられる。グリセリンは逆に、遺体が極度に乾燥するのを防ぎ、サリチル酸は、菌類の繁殖を防いだと考えられる(注)。

 では亜鉛塩にはどのような効果があったのか。アメリカ・エンバーマー協会の事務局長メリッサ・ジョンソン・ウィリアムズ氏によれば、ロザリアの遺体がほぼ完璧な状態で保存されているのは、亜鉛塩に負うところが最も大きいという。というのも亜鉛には、遺体を石のように硬くする働きがあるからだ。