そこには7億2000万円という数字が記されている。詐欺師もしばらく考えていたのだが、決断した。証書だけならともかく通帳の数字もちゃんとある。翌日、1億円の現金が届けられた。もちろん、坂家はこれでサヨウナラする。1億円のうち2000万円をブティックの女主人に渡して、終了だ。

 詐欺師のほうは、連絡が途絶えて大慌て。銀行に問い合わせても、そもそもそんな名前の口座はないといわれる始末。証書はむろんニセモノだ。だが、警察に届けるわけにもいかない。こうなったら、あいつを見つけてやると憤った。