釜石市鵜住居(うのすまい)地区にある釜石東中学校。地震が起きると、壊れてしまった校内放送など聞かずとも、生徒たちは自主的に校庭を駆け抜け、「津波が来るぞ」と叫びながら避難所に指定されていた「ございしょの里」まで移動した(右図参照)。日頃から一緒に避難する訓練を重ねていた、隣接する鵜住居小学校の小学生たちも、後に続いた。

 ところが、避難場所の裏手は崖が崩れそうになっていたため、男子生徒がさらに高台へ移ることを提案し、避難した。来た道を振り向くと、津波によって空には、もうもうと土煙が立っていた。その間、幼稚園から逃げてきた幼児たちと遭遇し、ある者は小学生の手を引き、ある者は幼児が乗るベビーカーを押して走った。間もなく、ございしょの里は波にさらわれた。間一髪で高台にたどり着いて事なきを得た。