コストコ崩落:構造計算担当者、急な設計変更で混乱

コストコ崩落:構造計算担当者、急な設計変更で混乱

毎日新聞 2013年03月09日 15時00分

コストコ多摩境店の立体駐車場のスロープの構造
拡大写真

 東日本大震災で東京都町田市の大型スーパー「コストコ多摩境店」のスロープが崩落した死傷事故は、11日で発生から2年になる。警視庁に業務上過失致死傷容疑で書類送検された建築士の社長らへの取材では、コ社側の突然の設計変更で現場が混乱し、構造計算を担当した2人の間で情報が共有されないまま作業が進められた実態も浮かぶ。建築士らは「急な変更が事故の背景にある」と主張する。

 関係者によると、最初の建築確認を受けた翌日の02年1月9日、コ社は突然、設計変更を指示。スロープは耐震性を高める筋交(すじか)いのある構造だったが、本体は筋交いを外して柱とはりで支える構造に変わった。構造計算の担当は豊島区の社長(65)から石川県の社長(66)に引き継がれた。

 コ社は設計変更の理由として「コストダウン」と「工期短縮」を挙げた。2月の着工を前に、構造計算は「約10日で仕上げるしかなかった」(石川県の社長)。一方、豊島区の社長は「補助役」として石川県の社長を手助けしたが、意思疎通は不十分だった。

 致命的だったのはスロープと建物本体の接合部分。石川県の社長は双方を一体として構造計算したが、実際はスロープと本体はつながっていなかった。

 豊島区の社長は「石川県の社長にはつながっていないと伝えたが、結果としてそれを前提とした構造計算になっていなかった。必要な情報はコ社から伝わっていると思った」と話す。一方、石川県の社長は「つながっているものだと思っていた」と説明する。接合部分を含め、構造計算に必要な書面が石川県の社長に届いていなかった疑いもある。

 コ社は構造計算に直接関わっていないため立件は見送られた。構造計算ミスを見逃したとされる港区の社長(71)は「計算に誤りがあったのは確かだが、混乱を招いたコ社の対応にも問題がある」と話す。捜査関係者は「コ社に道義的責任もある」としながらも「設計変更があってもプロとして建築士の仕事を果たすべきだった」と指摘する。コ社の代理人弁護士は毎日新聞の取材に「コメントできない」としている。【松本惇】