商売人たちは、行動経済学で検証されるずっと以前から、アンカリング効果の存在を経験を通じて分かっており、プライシング(価格設定)や価格交渉において活用してきています。端的に言えば、アンカリング効果を考慮するなら、売り手側が価格交渉を有利に進めたければ、「ふっかけた方が得」ということなのです。

 外国の個人商店では、しばしば値札がなく商店主との価格交渉で購入金額を決めますよね。この時、よほど善良な人でないかぎり、商店主が最初に提示する売値は、あきらかに「ふっかけ」の高過ぎる値段です。なぜなら、その数字が基準となって、利益幅の大きい高値で取引が決着する可能性が高くなるからです。ですから、買い手の立場からすると、よほど注意して商談しないとバカをみるかもしれないということでもあります。