もともと天保14年(1843年)成立の斎藤月岑著『増補・浮世絵類考』に写楽に関して次のように書かれていた。

俗称斎藤十郎兵衛。江戸八丁堀に住む。阿波侯の能役者。

 ところがこれが信用できないとなって、様々な人物が写楽に比定されてきた。本書で中野三俊は種々の資料を引用して、この記載が正しいことを証明する。もう今後どんなに新しい提案があっても中野の結論が改められることはないだろう。見事な謎解きだった。